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輸入車整備事例
ウィークポイントを押さえた修理 ~フォルクスワーゲン ニュービートルのウォーターポンプ交換~
投稿日:2019/12/20
自動車にとって水温は人間の体温と同じくとても大切です。 設定された温度よりも低くても高くてもダメで、低い場合は“オーバークール”、そして高い場合は“オーバーヒート”と呼ばれます。 どちらもエンジンにとって悪影響を起こすのですが、水温が高くなりすぎる“オーバーヒート”はエンジンを壊してしまう事もある重大なトラブルとなります。
この事例ではオーバーヒートを起こしてしまった、フォルクスワーゲン ニュービートルの修理事例をご紹介します。この事例では輸入車整備工場ならではのウィークポイントを押さえた点検と提案で、すばやく修理が完了しユーザー様に大変喜んでいただけました。
エンジンの中はどうなっている?
まずはエンジンがどのようにオーバーヒートしないようになっているかを説明します。 自動車はエンジンの中でガソリンを爆発させることによってピストンの上下運動を行い、ピストンに繋がるクランクシャフトが回転することによって動力を発生させています。 ガソリンを爆発させるのでエンジンの中は常に高温となるため、エンジンの周りには冷却するためのクーラントを循環させエンジンを冷やしながら走っています。
クーラントはウォーターポンプの力でエンジンの周りを循環しながら熱を吸収し、高温になったクーラントはエンジン前方に取り付けられているラジエターで冷やされます。エンジンとラジエターの間には水門の役割を担うサーモスタットがあり、エンジンが冷えているときにはサーモスタットが閉じてエンジン内だけを循環しながら早く適切な温度までクーラント温度を上昇させ、エンジンが高温になってくるとサーモスタットが開いてラジエターまでクーラントを循環させ、走行風やクーリングファンによってラジエターでクーラント温度を下げながらエンジンを冷やしています。 エンジンは適切な水温で最大の力が発揮できるように設計されているため、水温の管理は非常に重要なのです。
オーバーヒートしてしまうとどうなるの?
エンジンがオーバーヒートしてしまうと、エンジンの主要部分であるシリンダーヘッド自体が熱変形することによって圧縮不良を起こしたり、エンジンオイルとクーラントが混ざってしまったり、酷い場合はエンジンオイルの油膜切れを起こしてシリンダー内が損傷したりと、エンジンが大きなダメージを負ってしまいます。 こうなってしまうと高額な修理費用が掛かってしまったり、エンジン自体を交換しなければならなくなってしまいます。
オーバーヒートを起こす主な原因は?
オーバーヒートの原因はサーモスタットの故障、クーラント漏れが特に多く、外気温が高くなる夏場に起きやすいトラブルです。 走行中は水温計も注意することが大切で、いつもより針の位置が高かった場合はオーバーヒートを起こしているかもしれません。最近の車は水温計が無いモデルもあり、このモデルでは水温ランプが赤く点灯する事によってドライバーへ異常を知らせます。
今回、修理でご入庫いただいた2008年モデルのニュービートルは水温計が無いモデルですが、ユーザー様は突然赤い水温ランプがメーターに点灯した事に気付き、すぐに走行を止めてロードサービスで整備工場へ搬送となりました。
ビートルのオーバーヒートの原因を探求
整備工場では入庫すると同時に車両の状況を確認し、メカニックがユーザー様へ水温警告ランプが点灯した時の状況をヒアリングさせていただきます。 ユーザー様は水温警告ランプが点灯するまで特に異常を感じることはなかったとの事で、メカニックがクーラント漏れなどを確認しましたが、すぐに不具合が見つかる状況ではありませんでした。
クーラントの量は問題ないので、次に故障事例が多いサーモスタットを取り外して点検しましたが、こちらも問題なし。ラジエタークーリングファンの作動状態とコンピューターへ送られるの水温情報もスキャンツール(自動車診断機)を使いながら確認しましたが、どちらとも正常である事が確認できました。
オーバーヒートの要因となる主要箇所に問題がないのに水温警告ランプが点灯するという事は、水温警告ランプの表示エラーも疑いましたが、水温上昇テストを行うとやはり水温が上がりすぎてしまうのでオーバーヒートのトラブルが起こっている事に間違いはありません。
原因が判明!
通常なら故障原因究明に行き詰ってしまう状況ですが、このモデルのビートルにはウィークポイントがあり、それを確認するとやはり不良を起こしていました! その部品は「ウォーターポンプ」です。 ウォーターポンプはエンジン内にクーラントを循環させるためのポンプで、通常この部品が異音以外でトラブルを起こすことは少ないのですが、このモデルのビートルや同じ年式のゴルフなどのフォルクスワーゲンではトラブル事例が多いのです。
ウォーターポンプを取り外すにはタイミングベルトを取り外さなければならず、とても大掛かりな作業となってしまいますが、輸入車整備の経験を積んだメカニックはこのビートルのウィークポイントである事を知っていたので、各部が問題ない事とウィークポイントである事をユーザー様へ説明し、点検して不良を起こしていれば交換する事を了解いただいたうえで作業を行いました。
分解点検するとやはりウォーターポンプの不良でしたので、そのまま用意していた部品に交換する事によって作業時間を大幅に短縮でき、ユーザー様へ最短時間でご納車させていただく事ができました。 もしこういった知識や経験が無い整備工場なら、原因究明が出来なかったり、作業完了まで非常に時間がかかってしまったかもしれません。
ウォーターポンプ不良の具体的な内容は、エンジン内部で回転するインペラ部が破損し、ウォーターポンプ自体は回転してもインペラが回転せずクーラントが循環しなくなってしまうことです。 クーラントが循環しないとエンジンを冷やすことが出来なくなってしまいますのでオーバーヒートを起こしてしまいます。
インペラ部が完全に割れてしまっていました。 このモデルのビートルや同じ年式のゴルフなどでは非常に多いトラブル。 原因はこのインペラ部がプラスチック製であることで、交換部品はメーカー側も対策としてインペラ部をアルミ製に変更した部品を供給しています。 交換した部品は対策部品となっていますので、この先はウォーターポンプ不良を起こす可能性が少なくなり安心して乗っていただく事ができますね。
まとめ
このように輸入車では部品にプラスチック製パーツを使用している事が多く、パーツ素材が原因のトラブルが多く起こってしまいがちです。これは輸入車部品の品質が悪いという訳ではなく、高温多湿の日本で使用するに当たっては本国での使用をはるかに超えた負担が車にかかっている事が大きな原因でもあるのです。
これが輸入車は壊れやすいというイメージに繋がってしまっている部分でもありますが、この部分をしっかり理解した整備工場なら車種ごとのウィークポイントや予防整備が必要な箇所をしっかり点検してもらえますので、的確な整備で無駄な費用を抑えることもでき、安心して輸入車を楽しむことができるでしょう。 やはり輸入車は輸入車整備に対応した信頼できる整備工場でメンテナンスすることをおすすめします!
[Dr.輸入車ドットコム編集部]