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輸入車整備事例
今後は貴重な作業になる!?~マニュアルミッション車のクラッチオーバーホール作業~
投稿日:2019/10/04
皆さまは自動車に何を求めますか? 安全性や乗り心地、利便性や快適性、はたまたカッコ良さや速さを求める方もいるかと思います。
求めるものの中に、“車を操る楽しさ”を求める方もおられるのではないでしょうか。 そんな方達が乗る車の多くは、マニュアルミッション車であることが多いかもしれません。 この記事では、車を操る楽しさに繋がる部分の整備事例をご紹介します。
希少化するマニュアルミッション車
現在販売されている乗用車では、ほとんどがオートマチック車です。 マニュアルミッション車の設定がない車がほとんどではないでしょうか。 しかもドライバーもAT限定運転免許の方も多いので、マニュアルミッション車に乗ることが出来る人が本当に少なくなっています。
しかし“車を操る楽しさ”を求める方達にとって、クラッチとシフトレバーを操作してミッションを変速させながら走るあの感覚はなくてはならないものでしょう。
マニュアルミッション車が選択できる車とは
そんな方達が選ぶ車といえば国産スポーツカーはもちろんですが、輸入車も非常に選ばれていることをご存知でしょうか。
なぜ輸入車なのか?というと、輸入車にはマニュアルミッション車の設定が多く車両選択の幅があること。スポーツタイプ以外にもコンパクトカーやワゴンタイプの車にもマニュアルミッション設定があるのです。 ヨーロッパではマニュアル車はまだまだ多く走っており、ひと昔前まではマニュアルミッション車が主流でしたので輸入車にはマニュアルミッション車の設定が多いのです。 日本との自動車文化の違いがよくわかる部分ですね。
そしてマニュアルミッション車だからという理由で輸入車に乗り始めた方が、輸入車独特の“車を操る楽しさ”にどっぷりハマって輸入車ファンになる傾向もあるのです。 中古車市場ではマニュアルミッション車の車両価格が高騰している輸入車モデルもあり、AT車しか乗らない方にとっては不思議としか思えないかもしれないですね。
マニュアルミッション車ならではの整備作業
“車を操る楽しさ”が多く詰まっているマニュアルミッション車ですが、エンジンからの動力をミッションに伝えたり切り離したりする役目をもつクラッチがあり、その中にあるクラッチディスクという円形の板が摩耗するため交換が必要となります。
それでは車好きでもなかなかお目にかかることが出来ない、クラッチディスク交換の整備事例をご紹介します。 この作業はクラッチ一式を交換する事もあり、クラッチオーバーホールとも呼ばれます。
クラッチディスクの交換を開始
クラッチディスクを交換するには、先ずはミッション本体をエンジンから分離しなければなりません。自動車整備の中でも時間がかかる作業となり、車種や搭載エンジンによってはエンジンごと車から分離しなければならない場合もあります。
この車はFF車(エンジンが前にあり、前輪が駆動する車、多くの車種がこの構造となっています)で、ミッション本体だけ分離することができます。
ミッションを分離するためには、エンジンルーム内の様々な補機パーツ、ミッションに付属する配線やレバー、スターターモーター、そしてドライブシャフトも取り外さなければなりません。 ミッション周辺のパーツを取り外せば、やっとエンジンから分離させる事ができました。
ミッション本体は1600ccのこの車両でも40kg近くありますので、専用の道具を使って支えながら慎重に行わなければなりません。
やっとクラッチが登場
これがクラッチです。
外に見えているのが、クラッチディスクを押さえつけるバネの役目をするクラッチカバーと呼ばれるパーツ。茶色くなっているのはクラッチディスクが摩耗したダストです。ミッション本体にもダストがびっしり付着していますね。クラッチディスクはクラッチカバーの中にあります。
これがクラッチディスク。プレッシャープレートとも呼ばれます。 このプレートがエンジンの動力をミッションに伝えており、パワーのあるエンジンになればなるほどクラッチディスクの摩耗は早まる傾向にあります。 右が取り付けていたクラッチディスク、左が新品ディスクです。 溝の深さを見れば摩耗しているのが一目瞭然ですね。
組付けに入ります
クラッチディスクの摩耗で飛び散ったダストを吹き飛ばして清掃し、新品のクラッチディスクとクラッチカバーを取り付けました。
やっぱり新品は気持ちいいですね!ミッションを取り付ければ見えなくなりますが・・。 ここの組付けは中心をしっかり出して組付けないとミッションのメインシャフトが入らなくなりますので専用工具を使用して取り付けが必要です。
この後はミッションを取り付け、取り外した周辺パーツを確実に取り付けて完了しました。
費用はどのくらい?
このFF車のクラッチオーバーホールは6時間ほどの作業時間で工賃は約6万円、交換部品や附属パーツを含めると約10万円の整備作業となりました。
この機会におすすめする事とは
このタイミングでクラッチカバーのバネ力を向上させ、クラッチディスクの摩擦力も向上させた強化クラッチキットに交換する選択肢もあります。 こういった操作に直結するパーツは交換後の変化がよく分かるので楽しさが倍増します。
そしてミッション周りの付属パーツもリフレッシュを兼ねて交換しておくことをおすすめします。 今回ならクラッチオーバーホールの工賃に含まれて交換できるものも、それだけの交換となると工賃が数万円かかってしまうものもあります。 せっかくの機会なので、同時に交換できる消耗パーツは交換しておきましょう。
クラッチオーバーホール後は、クラッチの繋がり方や操作性も格段に向上し、より一層“車を操る楽しさ”を感じながら走ることが出来るようになりました!
まとめ
マニュアルミッション車だけしかないクラッチ交換作業は、今後貴重な作業になる可能性があります。 乗用車の98%以上がAT車といわれる日本ですので、AT車以外は乗ることができない方はもちろん、クラッチ交換が出来ないメカニックも増えるかもしれません。 その点、輸入車整備に対応したメカニックはクラッチ交換作業の経験が豊富な方が多いので、マニュアルミッション車を愛する方達の味方ですね。
これからの未来は電気自動車や自動運転車の時代と言われていますが、どの時代もマニュアルミッション車のように“車を操る楽しさ”を忘れない車たちに走り続けて欲しいものですね。
[Dr.輸入車ドットコム編集部]