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輸入車整備事例

同じ症状でも別の原因が ~プジョー207のターボ修理とシリンダーヘッドオーバーホール~

投稿日:2019/09/27

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自動車は社会情勢や世界の環境と非常に密接な関係があります。 この記事ではそんな環境対応に関係する修理事例を紹介します。

近年増え続けるダウンサイジングエンジン

世界的に環境問題が起こっている事で、よりクリーンな排気ガスと燃費向上を目指し、エンジンの小排気量化が進んでいます。 以前は2.5リッターや3リッターといったエンジンが当たり前にラインナップされていましたが、近年は1.5リッターや1リッターといったエンジンが非常に多くなっており、このようなエンジンをダウンサイジングエンジンと呼んでいます。

排気量が小さくなることで必然的にパワーがなくなってしまいますが、ダウンサイジングエンジンにはターボチャージャーやスーパーチャージャーといった過給機が搭載され、小排気量ながら2リッターや2.5リッターエンジン並みのパワーを持っているのです。 特にヨーロッパでは規制が厳しいためこの傾向が強く、国内で走る輸入車はターボチャージャーやスーパーチャージャーを搭載したダウンサイジングエンジンが中心となっています。

そして輸入車はガソリンエンジンでも燃焼室に直接ガソリンを噴射する「直噴エンジン」が非常に多く、燃費向上とパワーアップに繋がるため、多くのモデルに採用されています。 しかし直噴エンジンは、日本での使用環境や道路事情ではトラブルを起こしてしまう事例が多いのです。

ターボチャージャー付き1.6リッターのダウンサイジングエンジンを搭載した、プジョー207の修理事例を紹介します。

プジョー207のパワーがなくなってしまった

パワフルに走っていた207ですが、ターボチャージャーが壊れた様な感じで、パワーがなくなってしまったとの事で輸入車整備工場へご入庫されました。 メカニックが試乗してみると、やはりパワーがありません・・。 ターボ付きエンジンはアクセルを踏み込むとフロントサスペンションが伸びるのがわかるくらいのパワーがあるのですが、ご入庫いただいたお車はノンターボエンジンのようにパワー感がない状態です。

ターボチャージャー自体に損傷などは無く、スキャンツール(故障診断機)で診断するとターボプレッシャー系統の異常が発生している事が判明。 各部点検のうえココを疑い取り外してみると・・・












やはり、内部で壊れてしまっていました。 このパーツはターボプレッシャーリリーフバルブといって、一定以上のターボ圧力がかかった場合に圧力を逃がす役割をしています。

この事例ではプレッシャーリリーフバルブが損傷してしまったため、通常のターボ圧力まで逃げてしまい、まったくターボの役割が果たせていない状態でした。 このパーツを交換するとターボチャージャーの威力を発揮するようになり、本来の性能が蘇りました! ターボチャージャー本体が壊れてしまうとかなり高額な修理費用が発生しますが、この事例では最小限で修理が済みましたので、ユーザーさまも一安心し喜んでおられました。

同じ症状でも別の原因が

もうひとつ整備事例を紹介します。 別の同じプジョー207ですが、同じくターボチャージャーが壊れた様な状態となりご入庫です。

今回も同じくノンターボエンジンのようにパワー感がない状態。。。 エンジンチェックランプも点灯しています。 先ほどのお車と同じようにターボプレッシャーリリーフバルブを点検しましたが異常なしです。

ユーザーさまから異常が発生した状況やその時の詳細、そして車両購入時から現在までの使用状況やメンテナンス状況など細かくヒアリングさせていただき、ひとつの可能性に絞り込みました。 そしてその可能性を確信に変えるためスキャンツールでの診断や各部点検を行い、やはりこの原因しか考えられないという所まで辿り着きました。

辿り着いた原因は

その原因とは・・・

「燃焼室まわりのカーボン詰まり」です。これは日本の使用環境と道路事情のため直噴エンジンに起こってしまいやすいトラブルであり、修理には非常に大掛かりな作業となってしまいます。

ユーザーさまと相談を行い、大切な愛車なので修理費用が高額でも直して乗り続けたいとのお気持ちに応えるべくエンジン分解修理を行う事となりました。 輸入車ユーザーさまは車をとても大切にされる方がとても多く、我が子のように愛情を持って乗っておられる方が非常にたくさんおられます。 そんな想いが詰まった大切なお車を修理に預けていただき、メカニックとしては誇りを持って作業を行う気持ちになります。

修理作業を開始します

燃焼室のカーボン詰まりを改善するためには、エンジンを分解しシリンダーヘッドを取り外す必要があります。 車体前部からエンジン周辺パーツを取り外し、こんな状態まで分解を進めます。












こんな状態になってもプロのメカニックは元通りに戻せるのだから、やはりメカニックが凄い事を再認識せずにはいられませんね。

エンジンを分解しシリンダーヘッドを取り外すと・・・












やはりカーボンでバルブ、インジェクターとも詰まりまくっていました。 このカーボンのせいで圧縮不良を起こし、インジェクターノズルも詰まってしまい燃料噴射量が少なくなり、車側の補正だけでは補えなくなりパワーがなくなっていたのです。

カーボンが詰まる原因は

なぜこのようにカーボンが詰まるかというと、日本のように少し乗っては停止し渋滞も多い環境では本来燃焼するはずのガソリンが燃え切らない事と、直接燃焼室にガソリンを噴射する構造のためインテークバルブがガソリンで洗浄されないこともあり、燃えカスであるカーボンが燃焼室周りに蓄積されてしまうためです。 海外のように高速巡行で走行する環境では問題ないのですが、このトラブルは日本ならではといっても良いかもしれません。

日本でも通常に走行していればこのようになりませんし、定期的に高速道路を走行する事によって燃焼室周りをクリーンに保つことができますのでご安心ください。 ここまで詰まってしまうのは、よほど直噴エンジンには厳しい乗り方をされていたのだと思われます。

修理内容はインテークバルブとエキゾーストバルブを全て分解しオーバーホールを行います。インジェクターも洗浄を行いノズルの詰まりを改善させました。












オーバーホール後はこんなにピカピカです。 カーボンで隠れてしまっていたインジェクターもしっかり確認出来ますね。

修理が完了!

その後シリンダーヘッドをエンジンに組み込み、確実に作業を行い無事完了です。 完了後は修理前ががウソのように、パワフルに走行できるようになりました!

かなり時間がかかる作業となりましたが、ユーザーさまから今まで以上に愛情を持って乗り続けるよ!と笑顔で仰っていただき、メカニックにとってすべての苦労が報われた嬉しい瞬間になりました。

まとめ

・世界の環境によって車の構造も進化している。

・日本の環境だからこそ起こってしまうトラブルがあります。

・同じ症状でも原因が様々ですので、特に輸入車修理は情報や経験が必要です。

このように輸入車は国産車には無いようなトラブルが起こりますが、様々な情報を入手することによって特殊な事例にも対応が出来るようになります。 輸入車の修理は信頼できる輸入車整備工場へ任せましょう。

[Dr.輸入車ドットコム編集部]

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